The Essays of Maki Naotsuka

オンラインエッセー集

34 入京(クリスマス・イヴに蔵出しの自作詩) 2006.12.24

「入京」は、還暦を過ぎたわたしが学生時代に書いた詩。

f:id:madame-nn:20190125110216j:plain

出典:Pixabay

 

   入京


エルサレムの白いひろがりが
たたずむ仔ろばの足をひたす

仔ろばは耳を澄ますようにして立っていた
灰真珠色の外套に包まれて
主がほのかに座していらっしゃるからだ

至純の思念が沁みついた外套を
いくつもの手が触った

翼のない苦しみには
この外套がいくつあっても不足だ
縫い目のない下着を剥ぎ取っても
まだ不足だ

ひそやかな流血の予兆が
たたずむ仔ろばの足を冷たくする

主の名によって来られる王に祝福があるように。
天には平和、
いと高き所には栄光。*1

主は都のうつくしさに泣かれた

*1:フランシスコ会聖書研究所訳「新訳聖書」中央出版社、1980