The Essays of Maki Naotsuka

オンラインエッセー集

文学

52 厳然とタブーが君臨しえた世界における物語、大岡昇平「野火」 2008.2.16

昭和28年(1953年)10月、神奈川・大磯の自宅庭にて、妻・春枝と 出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons) 『大岡昇平〈ちくま日本文学全集)』(筑摩書房、1992年)所収「野火」を読んだ。戦争を描いた小説を読むのは何となく気が重いのだけれ…

50 アストリッド・リンドグレーン (3)愛蔵版アルバムで紹介された『はるかな国の兄弟』と関係のあるエピソード 2015.9.14

エッセー「アストリッド・リンドグレーン」(1)ワイルドなピッピに漂う憂愁の影 2010.4.23(2)『はるかな国の兄弟』を考察する 2014.4.30(3)愛蔵版アルバムで紹介された『はるかな国の兄弟』と関係のあるエピソード 2015.9.14 Astrid Lindgren omkring 1…

49 アストリッド・リンドグレーン (2)『はるかな国の兄弟』を考察する 2014.4.30

エッセー「アストリッド・リンドグレーン」(1)ワイルドなピッピに漂う憂愁の影 2010.4.23(2)『はるかな国の兄弟』を考察する 2014.4.30(3)愛蔵版アルバムで紹介された『はるかな国の兄弟』と関係のあるエピソード 2015.9.14 vermilionchameleonによるP…

48 【批評】第164回芥川賞受賞作品、宇佐見りん「推し、燃ゆ」 2021.3.29

Anja#helpinghands #solidarity#stays healthyによるPixabayからの画像 この作品には、語り手を選択する時点での問題がある。呆れたことに、このことを指摘した選考委員はいない。 発達障害のある若い女性「あかり」が、一人称の語り手として設定されている…

44 バルザックの風貌、悲鳴、ホロスコープ 2006.11.18,2011.9.8,2012.2.15

ルイ=オーギュスト・ビソン(Louis-Auguste Bisson,1814–1876)が1842年にダゲレオタイプ(銀板写真術)で撮影したオノレ・ド・バルザック(Honoré de Balzac,1799-1850)、パリ美術館(Paris Musées)。 風貌 悲鳴 ホロスコープ 風貌 バルザックと動物園…

43 拙読書体験から疑問に思った、「青い鳥文庫」に関する新聞記事 2011.3.7

compositaによるPixabayからの画像 「講談社新社長」「青い鳥文庫」に関する新聞記事 拙読書体験 ベルテ・ブラット(石丸静雄訳)『アンネは美しく』(偕成社、1970) 「講談社新社長」「青い鳥文庫」に関する新聞記事 昨日(2011年3月6日)の話。「講談社の…

42 博多からの電車で耳にした、編集者と作家の会話 2019.5.27

Mary_R_SmithによるPixabayからの画像 土曜日、娘と博多に遊びに出かけました。 帰りの電車で、作家と編集者が近くに座っていました。年輩の編集者の声がまるで話の内容を一般公開しているかのように大きかったので(とても真面目な様子でした)、2人の話が…

40 末吉暁子『星に帰った少女』(偕成社、2003改訂版)を読む 2019.3.19

PezibearによるPixabayからの画像 ネタバレあり、ご注意ください。 末吉暁子『星に帰った少女』(偕成社、2003改訂版)を読んだ。 佐藤さとる氏の解説によると、イギリスの女流作家フィリッパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』が日本に紹介されたときの影響力…

39 【批評】芥川賞候補、川上未映子の詩『私はゴッホにゆうたりたい』を読む 2007.7.7 

EgoAltereによるPixabayからの画像 残業を終えて23時近くに帰宅した書店勤務の娘が、「芥川賞と直木賞の候補が発表になったよね。芥川賞候補のほうは訳のわからない題名ばかりだけれど」といったので、芥川賞候補をネットで検索してみた。 円城塔「オブ・…

33 「文學界」11月号の「黒い鏡」、新年号の「カンディンスキーの膝」 2006.12.8

出典:Pixabay 文藝春秋の文芸雑誌「文學界」を年間購読しているものの、パラパラとめくるだけで終ることが多い。 たまには面白く読む作品もあって、それが11月号の『特集 世界の文学賞はどうなっているか』、村上香住子「黒い鏡」、新年号の荻野アンナ「カ…

31 児童文学作品の400字詰め原稿換算枚数を調べてみる 2018.12.16

出典:Pixabay 執筆中の児童小説「不思議な接着剤」は、プロローグ編に当る『不思議な接着剤1: 冒険前夜』*1をkindleストアに出している。歴史小説を先に仕上げたいので、本編の電子出版には時間がかかりそうだ。 計画では100枚強のプロローグ編と本編合わ…

30 アストリッド・リンドグレーン (1)ワイルドなピッピに漂う憂愁の影 2010.4.23

エッセー「アストリッド・リンドグレーン」(1)ワイルドなピッピに漂う憂愁の影 2010.4.23(2)『はるかな国の兄弟』を考察する 2014.4.30(3)愛蔵版アルバムで紹介された『はるかな国の兄弟』と関係のあるエピソード 2015.9.14 出典:Pixabay 連載形式で…

29 五感が隅々まで働いているモーリアックの文章 2007.10.9~2018.5.22(2019年に追記)

出典:Pixabay 小説を書くとき、傍に置いているのは、いつ頃からかフランソワ・モーリアック(遠藤周作訳)『愛の砂漠』(講談社[講談社文芸文庫]、2000)だ。 フランスのボルドーに生まれた、カトリック小説家として知られるフランソワ・モーリアック(Fr…

28 同人誌提出作品~俳句「回転木馬」 2007.7.28

出典:Pixabay 同人誌「日田文學 55号」に俳句を提出すると決めたまではよかったものの、何せ我流俳句、一旦検討し出すと頭が痛くなってくる。 そんなわたしに励ましの言葉をくださったかたがあり、ブログをしていてよかったと切に思った。それで、冷静な頭…

17 サラダが連想させるマルグリット・オードゥー『孤児マリー』 2006.10.28

出典:Pixabay わたしは料理をしながら、これまでに読んできた文学作品の一場面が脳裏をかすめることがよくあります マカロニサラダを作るときは必ずといっていいほど、マルグリット・オードゥー『孤児マリー』のワンシーンが思い浮かぶのです。 Marguerite …

13 『ジュニア版 世界の文学(全35巻)』(岩崎書店,1967–1969) 2006.10.2

出典:Pixabay 昭和42年(1967)から44年(1969)にかけて、岩崎書店から『ジュニア版 世界の文学(全35巻)』が刊行されました。定価各380円とあります。 その中の(山本和夫編)『世界名詩集(ジュニア版 世界の文学 35)』(岩崎書店,1969)によって、わ…

12 月とロルカ 2006.9.28

『ジプシー歌集』(1928年)初版のカバー出典:Wikimedia Commons 昨日は夜空に三日月が息を呑むような美しさでした。 金色を帯びた黄色い月で、ぴかぴか光って見えました。 月といえば、思い出されるのがスペイン生まれの詩人・劇作家であったロルカ*1の詩…