The Essays of Maki Naotsuka

オンラインエッセー集

22 宅配寿司の謎 2007.4.18

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出典:Pixabay

 宅配寿司を頼んだ。

 この街に引っ越してきて3年目になるが、宅配寿司は引越し後しばらく経った頃から、ときどき利用させていただいている。

 その宅配寿司についてだが、謎がある。

 お寿司の1個1個が小ぶりだけれど味がいいときと、太っちょといっていいくらいに寿司飯もねたも大きいが味はもう一つ、といったときとが、ランダムにあるのだ。

 1回の注文につき、双方が混じっているときというのは、なかったと思う。

 家族で謎を解き合った。

 小ぶりで味がいいときは師匠、大ぶりで味がもう一つのときは弟子が握っているのだろうという結論が出た。

 師匠のときと弟子のときとでは、何にしても分量が違う。

 師匠のときに頼んだものでは足りなかったと思い、サイドメニューのものを加えて頼んだところ、配達されたのは弟子の作品で、サイドメニューのものは誰も食べられないくらいにおなかが膨れてしまうことがあるかと思えば、その逆に、弟子のものがくると予測して頼んだら、配達されたのは師匠の作品で、量が足りなかった――というようなことが、初めの頃にはよくあった。

 今では、冷蔵庫にすぐに食べられそうなものがないときは、サイドメニューから日持ちしそうなものを何か頼むことにしている。足りないときは腹の足しになるし、食べきれなくても保存できるからだ。

 夫と娘は、美味しい師匠の作品がいいという。わたしは味はもう一つでも、量の多いほうが家計が助かるので、弟子の作品を贔屓にしている。

 ところで、このところ異変を感じている。

 前回、配達されてきた作品が、師匠のものとも弟子のものともつかないものだったのだ。大きさも味も、丁度両者を折衷させたような作品だった。わたしたちは混乱し、首をかしげた。

 そして昨夜もまた、折衷主義的作品が配達されてきたのだ! わが家では、再び宅配寿司の謎をめぐって議論が持ち上がった。結論は3つに割れた。

  1. 今までは師匠と弟子がそれぞれの勘で握っていたところを、双方が歩み寄ってレシピ化し、均一なものにした。
  2. 前回、今回共弟子の作品で、弟子が師匠の味に近づこうと切磋琢磨した結果である。
  3. 新しい弟子が入ってきた。前回、今回共、古い弟子よりも才能のある新しい弟子が握った。