The Essays of Maki Naotsuka

オンラインエッセー集

28 同人誌提出作品~俳句「回転木馬」 2007.7.28

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同人誌「日田文學 55号」に俳句を提出すると決めたまではよかったものの、何せ我流俳句、一旦検討し出すと頭が痛くなってくる。

そんなわたしに励ましの言葉をくださったかたがあり、ブログをしていてよかったと切に思った。それで、冷静な頭に戻り、これまでつくった中から選択したのが次の25句。

  回転木馬

 

つくねんとぼた山のあり春の雨

垂れ込めて花菜のひかり浮かびたる

勝鬨(かちどき)の面の艶なる武者人形

鯉のぼり挑むがごとく泳ぎをり

神経の細さ似る子よ夏帽子

木のぼりの娘(こ)落ちて泣いて夏は果つ

炊き出しの意気極まらば山車近し

神輿待ち野宴なれば土匂ひ

一念にもがいて駆くる運動会

こゑの中ほろところんで運動会

まな板や飛魚飛びし海の果て

日盛りの子となり初めし産湯かな

秋茄子の黒く照り合ひ列なせり

秋の蚊の触れては触るる壁づたひ

台風圏燭のひかりに家族の手

国東の潮の香れる葡萄園

秋汐に山すそぬれて輝けり

山嶺を数へし先に月りんと

大比売(ひめ)の山あり月は黄を強め

宇佐の月うさぎ半身くつきりと

貴婦人の衣装の如き百合活けぬ

大輪の白は深んで百合豪奢

見遣るたび未知の白なり百合の花

少年にゆかた短し宿の春

屋形船泊(は)つる冬川朝の目に

 下からの2句は、昔つくった次の10句の中から採った。

  日田温泉 十句

 

ゆあみして父母(ちちはは)と酌む夫(つま)の春
かん酒に姑(はは)茜さし三隈川
少年にゆかた短し宿の春
ゲヱム待ち少女ゆざめの宿は深(ふ)く
宿に寝て舅(ちち)のしづかさ水仙
また覚めて初夢分かつ湯の火照り
初泣きの児童矜持は大きかり
屋形船泊(は)つる冬川朝の目に
枯山の社(やしろ)の途を子ら駆けぬ
せせらぎの輝くを見し三日かな

 「少年にゆかた短し宿の春」という句は夫方の甥をよんだものだが、思春期に入るまえの少年独特の危うさ、みずみずしさを表現したいと思った。気に入っていた句だったので、なんとか入れたいと考えた。

一応候補に挙げたのは、次の諸句だった。

髪洗ふ瞑目のとき過ぎる相
初空に同じ足音朝刊来
授かりしものを孕まん寒卵
姑嫁たがへてむかふ初鏡
大宰府は底冷えの町久女の忌
足のうら冷たき真夜や水仙
天からの贈りものなる春の雪
痴れ言の父の面影梅雨深く

最後に挙げた句は、「痴れ言の父の面影月見草」を改作したものだが、個人関係が露出しすぎている気がして採らなかった。そうした句、感情が出た句、卓上句は姿を消した。

個人的には、「叱りつつまた鬼女と化し大西日」なんてのも面白いと思ったが、激しすぎて他の句との均衡を破ると感じ、候補にも挙げなかった。

それから、これは戦略としてだが、百合の句ばかり集めたものも一緒に送って、いずれかを同人誌主幹に選んでいただくことにした。好みに添わないと落とされ、全然掲載されないことになるので、第二希望まで送る癖がついてしまったのだった。

百合の句は出来にバラつきがあるものの、テーマが一貫しているので、そちらを採られる可能性もあるかと思う。

百合の句には他に「除夜の鐘鳴つて白百合開きけり」などという句もあり、実際に除夜の鐘が鳴り終わる頃に開きかけたのだが、作為的に感じられるのが皮肉だ。季重なりでもある。

  百合の花

 

ふつと閉じ四方指したる百合若き

咲きそめて香気清(す)みさす小百合かな

百合の花ほのひらく度かほりきぬ

百合なれば莟の全てひらきけり

奥の力(りき)真白に放つて百合ひらく

花がめに降りハツハツと百合咲きぬ

青やかに蘂を含める百合白く

白百合は花粉こぼして精気尽き

枯るるまで高く香りし百合の花

丘陵に白く浮かぶや百合の群れ

相眺めて百合の名知るやカサブランカ

貴婦人の衣装の如き百合活けぬ

大輪の白は深んで百合豪奢

見遣るたび未知の白なり百合の花

わが魂(たま)の谷あひの色百合白き

百合の花見果てぬ夢の深まりて

近頃では、カサブランカは見かけなくなった。カサブランカに似ているけれど、頭が垂れていない別の名の百合をよく見かける。名は何だったか。

わたしは頭を垂れている百合のほうが好みだ。花屋さんに鉄砲百合が出ていたので、新しいいい句が次々に出来ることを期待し、2本買ってきた。これを書いている今は、まだ莟のままだ。

咲くのもそろそろかと思って、楽しみに見ている。全部で8つある莟のうち、一つが卵でも孕んだみたいにふくらみ、先のほうがほのかに割れてきた……

同人誌に提出が終れば、次は短編小説が待っている。すぐにとりかからなくては、来月中に完成できなくなるだろう。夏バテなんていっていられない。

 

追記:

「日田文學 55号」(江川義人編集、河津武俊発行、平成19年9月5日)に掲載されたのは「回転木馬」だった。