The Essays of Maki Naotsuka

オンラインエッセー集

54 イタリア絵本展、及び邦訳版から思ったこと 2015.10.16

イタリア語を勉強している娘が百貨店のイタリア展で、2冊の絵本を購入した。

イタリア展の絵本コーナーには、印象的な絵本がいろいろと置かれていた。娘はその日、黄色い表紙の絵本を選んだのだが、別の日にまた行って、白っぽい表紙の絵本を買った。

わたしはモナリザを連想させる絵のある絵本に心が惹かれたが、娘の買った絵本もどちらもすばらしいと思った。

こんな絵に(どんな絵とはうまくいえないが、ひとことでいえば芸術的な絵といえばいいだろうか)、日本の子供たちは飢えているのではないだろうか。

絵本ですら、漫画っぽい絵が多いように思う。それも、目の大きな、媚びたような顔をした子供たちの顔がここにも、あそこにも。わたしは吐き気すら覚える。

イタリアはレオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロなどの偉大な画家を生んだ国だけれど、日本だって北斎を思い出せばわかるように、負けてはいない。

本格的な挿絵画家を目指している人は日本にも多いはずだ。そうした人々はどこへ行ってしまうのだろう。

次の記事は5年前に書いた。そのころはまだわたしが文学界を批判すると、僻みととられることも多かった。今ではそうではなかったことがはっきりとわかる。

naotsukas-essays.hatenablog.jp

すっかり左傾化し、腐敗した日本の文学界。そこで書いている人々にはその自覚がないかもしれない。

わたしは芥川賞に選ばれる近年の作品からも顕著な日本語のおかしさが国民、特に子供たちに与える深刻な影響について深く憂えている。

絵本の話に戻ると、白っぽい絵本は、子供がおかあさんにせがむが如く、娘に訳して貰った。月曜日と昨日と明日が出てくるお話で、月曜日はやがて雪の中に消えていき、昨日と明日がそのことを悲しんで泣く。その悲しみの表情が、心底悲しんでいる子供の表情そのままで、わたしも思わず……。

でも、新しい(別の)月曜日が現れる。

不思議な印象の絵本、忘れがたいお話になりそうだ。

追記:

ググってみたところ、作者 Anne Herbauts はベルギーのイラストレーターで、活躍なさっているようだ。YouTubeに、インタビュー動画が公開されている。

そして、何と、アンネ エルボーの他の本がひくまの出版から6冊、邦訳で出ているではないか(現在は中古でしか入手できないようだ。原書もAmazonでは中古でしか入手できない)。

1978年に浜松市でひくまの出版を創立なさったのは、那須田稔氏。息子さんが那須田淳氏。

ひくまの出版は平成26年に倒産したとウィキペディアにあった。よい本がずいぶん出ていたようなのに、残念だ。

この方が児童文学界のトップにずっといらっしゃたとしたら(どうしてそうではないのか、事情は知らないが)……わたしは文学界を糾弾するような、こんな記事を書いていただろうか。

わたしは基幹ブログ「マダムNの覚書」で、感動した那須田稔氏の本の感想を書いている。

2014年6月21日 (土)
皮相的反戦ものを超えた真のヒューマニズムの書、那須田稔氏の児童文学作品

https://elder.tea-nifty.com/blog/2014/06/post-b33c.html

2014年6月25日 (水)
本物の文学の薫りがする、那須田稔著『ぼくらの出航』

https://elder.tea-nifty.com/blog/2014/06/post-07f2.html

2014年6月30日 (月)
子供も大人も物識りになれる那須田稔著「忍者サノスケじいさんわくわく旅日記」シリーズ

https://elder.tea-nifty.com/blog/2014/06/post-df71.html